「うちの子、テレビを見ている時や寝ている時に、ぽかんとお口が開いていることが多いかも…」
ふとした瞬間に、そんな風に感じたことはありませんか?
その「ぽかん口」、実は「口呼吸」のサインかもしれません。
こんにちは。
野田阪神歯科クリニックで歯科衛生士をしております。
たくさんの子どもたちのお口を見てきた経験からお伝えしたいのですが、口呼吸は、単なる癖ではありません。
虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、実は将来の顎の成長や顔つきにまで影響を与えることがある、と言われているんです。
少し心配になってしまいますよね。
でも、ご安心ください。
口呼吸は、その原因を正しく知り、適切なトレーニングを行うことで改善が期待できます。
この記事では、なぜ鼻呼吸が大切なのか、そしてご家庭で親子で楽しく取り組める改善トレーニングについて、分かりやすくお伝えしますね。
もしかして、うちの子も?お家でできる口呼吸セルフチェック
「うちの子は大丈夫かな?」と気になったら、まずは簡単なチェックをしてみましょう。
歯科衛生士として、保護者の方にいつもお伝えしている観察ポイントです。
一つでも当てまったら、口呼吸の習慣があるかもしれませんね。
日常生活でのサイン
- いつも口がぽかんと開いている
- 唇がカサカサに乾いている(特に上唇が白っぽく、富士山のような形になっている)
- 食べ物をよくこぼす、クチャクチャと音を立てて食べる
- 発音が不明瞭な言葉がある(特にサ行、タ行、ナ行など)
- 姿勢が悪い(猫背気味)
就寝中のサイン
- いびきをかく
- 寝ている時に口が渇いて、何度も起きてしまう
- 朝起きた時に「喉が痛い」と言う
「ぽかん口」が引き起こす、お子さまの将来への4つの影響
口呼吸を続けてしまうと、お口の中だけでなく、全身にどのような影響が出る可能性があるのでしょうか。
少し怖い話に聞こえるかもしれませんが、知っておくことが、予防への大切な第一歩です。
1. 顔つきや歯並びへの影響(アデノイド顔貌)
口呼吸が続くと、舌が正しい位置(上あご)に収まらず、だらんと下がり気味になります。
すると、上あごの成長が十分に促されず、面長でぼんやりとした印象の「アデノイド顔貌」と呼ばれる特徴的な顔つきになる可能性があります。
また、舌で前歯を押してしまったり、唇の力が弱まったりすることで、出っ歯や歯並びがガタガタになる原因にもなります。
2. 虫歯や歯周病のリスク増加
お口が常に開いていると、大切な唾液が乾いてしまいます。
唾液には、お口の中の汚れを洗い流したり、細菌の活動を抑えたり、歯を修復したりする大切な役割があります。
この唾液の働きが弱まることで、虫歯や歯肉炎のリスクがぐっと高まってしまうのです。
3. 免疫力の低下とアレルギー
鼻は、吸い込んだ空気のウイルスやホコリを取り除く「天然の高性能フィルター」です。
さらに、冷たく乾いた空気を、体に優しい温度と湿度に調整してくれる加湿器の役割も果たします。
口呼吸ではこのフィルターを通らないため、ウイルスが直接体内に入りやすくなり、風邪をひきやすくなったり、アレルギー症状が悪化したりすることがあります。
4. 集中力や睡眠の質への影響
口呼吸は、鼻呼吸に比べて浅い呼吸になりがちです。
そのため、脳や体への酸素供給が非効率になることがあります。
これが日中の眠気や集中力の低下につながったり、いびきによる睡眠の質の低下を招いたりする可能性が指摘されています。
なぜ大切なの?鼻呼吸がもたらす素晴らしいメリット
口呼吸のリスクを知ると、逆に鼻呼吸がいかに素晴らしいかが分かります。
鼻呼吸の習慣は、お子さまの健やかな成長への最高のプレゼントです。
全身を守るフィルター機能と加湿機能
鼻は吸い込んだ空気を浄化し、体に最適な温度と湿度に調整してくれます。
これにより、ウイルス感染のリスクを減らし、喉や肺を優しく守ります。
正しい顎とお顔の発育をサポート
鼻呼吸をすると、舌が自然と上あごの正しい位置に収まります。
この舌の位置が、上あごを内側から適切に押し広げ、きれいな歯並びとバランスの取れた顔立ちの土台を作ってくれるのです。
全身への効率的な酸素供給
落ち着いた深い鼻呼吸は、体内に酸素を効率よく取り込むことができます。
これにより、勉強や運動時のパフォーマンスが向上したり、穏やかな気持ちを育んだりすることにも繋がります。
今日から親子で実践!楽しく続ける鼻呼吸改善トレーニング
「改善が大切なのは分かったけど、トレーニングは難しそう…」と感じるかもしれませんね。
大丈夫です!
私にも5歳の娘がいますが、ここでは親子でゲーム感覚で楽しめる簡単な方法をご紹介します。
まずは基本の「あいうべ体操」
お口周りの筋肉を鍛える、最も代表的で効果的な体操です。
- 「あー」と口を大きく開く
- 「いー」と口を横に大きく広げる
- 「うー」と唇を前に突き出す
- 「べー」と舌をあご先に向かって思い切り伸ばす
これを1セットとして、1日30回を目標に始めてみましょう。
声は出さなくても大丈夫です。
お風呂の時間やテレビを見ている時など、時間を決めて習慣にするのがおすすめです。
遊びながらできる簡単トレーニング
吹き戻し(ピロピロ笛)
楽しみながら口を閉じる筋肉(口輪筋)を鍛えられます。100円ショップなどでも手軽に購入できるので、ぜひ試してみてください。
風船ふくらまし
鼻から息を吸って、口をすぼめてゆっくり風船をふくらませます。頬の筋肉をしっかり使う良いトレーニングになります。
ガムトレーニング
砂糖不使用のキシリトールガムなどを、左右の歯で均等に噛むように意識しましょう。噛む力を育て、舌の正しい動きを促します。
日常生活で意識したいこと
食事の際は、少し歯ごたえのある食材(根菜やきのこなど)を取り入れ、「一口30回」を目標に、よく噛んで食べることを意識させてみましょう。
よく噛むこと自体が、お口周りの最高のお口のトレーニングになります。
よくある質問(FAQ)
Q: 口呼吸は何歳くらいから気をつけるべきですか?
A: 3歳頃から意識し始めると良いでしょう。
顎の成長が活発になるこの時期の呼吸の習慣が、将来に大きく影響します。
気になるサインがあれば、年齢にかかわらず一度ご相談くださいね。
Q: 指しゃぶりやおしゃぶりは口呼吸と関係ありますか?
A: はい、関係があります。
長期間(4〜5歳以降)続く指しゃぶりやおしゃぶりは、出っ歯や前歯が噛み合わない状態(開咬)の原因となり、結果的に口を閉じにくくして口呼吸を誘発することがあります。
Q: 鼻炎持ちで鼻が詰まりやすいのですが、トレーニングしても意味がありませんか?
A: とても良い質問ですね。
その場合、まずは耳鼻科を受診し、鼻づまりの原因を治療することが最優先です。
鼻で呼吸ができる状態を作ってから、口呼吸の癖を改善するトレーニングを行うのが最も効果的ですよ。
Q: トレーニングはどのくらい続ければ効果が出ますか?
A: 個人差はありますが、まずは3ヶ月を目標に毎日続けてみてください。
大切なのは、正しいやり方で習慣にすることです。
「毎日の小さなケアが、将来の大きな差になります」から、焦らず一緒に頑張りましょう。
Q: 改善のために、夜、口にテープを貼っても良いですか?
A: 市販の鼻呼吸テープなどもありますが、鼻呼吸が十分にできない状態で口を塞ぐと危険な場合もあります。
自己判断で行うのは絶対に避けてください。
必ず、耳鼻科や私たちのような歯科で鼻の通りに問題がないことを確認してから、専門家の指導のもとで行うようにしてください。
まとめ
お子さまの「ぽかん口」、いかがでしたか?
口呼吸は、見た目の問題だけでなく、お子さまの健やかな成長に幅広く影響することをご理解いただけたかと思います。
- 口呼吸は、顔つきや歯並び、虫歯、免疫力にまで影響する。
- 鼻呼吸は、体を守り、健やかな発育を促す最高の習慣。
- 「あいうべ体操」など、親子で楽しく続けられるトレーニングがある。
- 鼻炎など、他の原因が隠れている場合は専門医への相談が大切。
でも、最もお伝えしたいのは、早く気づいて対処することで、そのリスクは大きく減らすことができるということです。
まずはご紹介したチェックリストやトレーニングを、ぜひ親子で楽しみながら試してみてください。
そして、もし「これで合っているのかな?」「うちの子の場合はどうなんだろう?」と不安に思うことがあれば、一人で抱え込まずに、いつでも私たち専門家にご相談くださいね。
野田阪神歯科クリニックでは、お子さま一人ひとりのお口の状態や成長段階に合わせて、丁寧にサポートさせていただきます。
お口の健康は、全身の健康の入り口です。
一緒に大切なお子さまの未来を守っていきましょう。