もうすぐ花粉の季節がやってきますね。
くしゃみ、鼻水、目のかゆみ……毎年この時期は本当につらいですよね。
でも実は、花粉症は目や鼻だけでなく、歯やお口にも影響を与えることがあるのをご存じですか?
野田阪神歯科クリニックで歯科衛生士をしております。
毎年この季節になると、「虫歯でもないのに奥歯が痛い」「なんとなく歯が浮く感じがする」とおっしゃる患者さんが増えてきます。実は、その痛みのなかには花粉症が原因のケースが少なくありません。
この記事では、花粉症と歯の痛みのあいだにある”意外なつながり”を分かりやすくご説明し、花粉シーズンに口腔トラブルを防ぐための具体的なケア方法もお伝えします。
【この記事の結論】花粉症と歯の痛み・口腔トラブルの要点まとめ
| 疑問・テーマ | 答え・ポイント |
|---|---|
| なぜ花粉症で歯が痛くなるの? | 鼻の横にある「上顎洞(じょうがくどう)」が副鼻腔炎を起こし、すぐ下の奥歯の神経に圧力が伝わるため |
| 副鼻腔炎による歯痛の特徴は? | 「上の奥歯が2〜3本同時にズーンと痛む」「体を動かすと響く」「鼻づまりと同時に起こる」 |
| 口呼吸が虫歯を増やすのはなぜ? | 鼻づまり→口呼吸→「ドライマウス(口腔乾燥)」になり、唾液の殺菌・自浄作用が失われるため |
| 花粉症の薬がお口に与える影響は? | 抗ヒスタミン薬の「抗コリン作用」で唾液が減少し、虫歯・歯周病リスクが上がる |
| まず何科に行けばいい? | 「まず歯科」でレントゲン・CT検査を受け、歯の異常がなければ耳鼻咽喉科へ |
| 自分でできる予防策は? | 「起床直後の歯磨き」「就寝前フロス」「こまめな水分補給」「寝室の加湿(湿度50〜60%)」「キシリトールガム」の5習慣 |

花粉症で歯が痛くなるのはなぜ?上顎洞炎・副鼻腔炎との関係
「歯が痛いのに、歯が原因じゃないの?」と驚かれる方がとても多いです。
でも実際、花粉症をきっかけに歯痛が起こることは医学的にも広く知られた現象です。
そのカギとなるのが「上顎洞(じょうがくどう)」という空洞の存在です。
上顎洞とは?奥歯と副鼻腔の”近すぎる”位置関係
副鼻腔(ふくびくう)とは、鼻のまわりの頭蓋骨に存在する4つの空洞の総称です。
その中のひとつ「上顎洞」は、頬骨の裏側(鼻の両脇)にあり、上の奥歯のすぐ上に位置しています。
驚くことに、人によっては奥歯(とくに第一大臼歯)の根の先が上顎洞の中に入り込んでいることもあるくらい、両者の距離は非常に近いのです。まるで薄い壁一枚を隔てているような関係と言えます。
これが、副鼻腔の炎症が歯痛として現れる大きな理由です。
花粉症→副鼻腔炎→歯痛のメカニズム
花粉症が歯痛を引き起こすまでの流れを順に追ってみます。
- 花粉を吸い込むことで鼻の粘膜がアレルギー反応を起こし、腫れる
- 鼻腔と上顎洞をつなぐ細い管が、腫れた粘膜によって塞がれる
- 上顎洞の中に細菌が増えて炎症を起こす(副鼻腔炎・上顎洞炎)
- 炎症による腫れと圧力が、すぐ下にある奥歯の根元や神経に伝わる
- 「虫歯でもないのに歯が痛い」という症状が現れる
ある報告では上顎洞炎患者の約18%に歯痛が認められており、副鼻腔炎が歯痛の原因となることは珍しくありません。
毎年花粉の季節に「また同じ歯が痛くなってきた」という患者さんに当院でもよくお会いするのですが、原因が副鼻腔炎だったというケースは決して珍しくありません。
「副鼻腔炎による歯痛」vs「虫歯・歯周病の歯痛」—自分でできる見分け方
「これって虫歯?それとも花粉症のせい?」と迷ってしまう方は多いと思います。
いくつかの特徴的なサインを知っておくと、原因のあたりをつけやすくなります。
副鼻腔炎による歯痛に多いサイン
以下に当てはまるものが多い場合は、副鼻腔炎が歯痛の原因になっている可能性が考えられます。
- ズーンとした鈍い、うずくような痛み(鋭くはない)
- 階段の上り下りや軽く跳ぶと、歯に「響く」感覚がある
- 何もしていないときにも違和感や鈍痛がある
- 体の向きを変えると痛みが増す
- 上の奥歯が「2本、3本」と複数本同時に痛む
- 鼻づまりや黄色い鼻水、頭の重さを同時に感じている
- 花粉症・鼻炎・風邪の症状と歯痛が重なっている
「2〜3本の歯に同時に違和感がある」というのは、副鼻腔炎による歯痛の非常に特徴的なサインです。
虫歯はほぼ1本に原因が特定できますが、副鼻腔炎の場合は上顎洞に接している歯の根が広範囲に影響を受けるため、複数本が同時に痛みます。
虫歯・歯周病の場合に多い歯痛の特徴
一方、次のような特徴がある場合は、虫歯や歯周病が原因である可能性が高くなります。
- 痛い歯が1本だけ、明確に特定できる
- 冷たいもの・甘いものを食べたときにズキンとしみる
- 特定の歯を噛んだときだけ鋭く痛む
- 歯茎が赤く腫れている、血が出る
- 花粉症などの鼻症状とは関係なく痛みがある
ただし、これらはあくまで参考の目安です。
症状が似ていることも多く、自分で正確に判断するのはなかなか難しいものです。
歯痛が続く場合は、まず歯科を受診して原因を調べてもらうことをおすすめします。
鼻づまりによる口呼吸が虫歯・歯周病リスクを高める仕組み
花粉症で歯が痛くなるのは副鼻腔炎だけが原因ではありません。
「鼻づまり→口呼吸」という習慣も、お口の健康に少しずつダメージを与えていきます。
唾液の役割とドライマウスのリスク
唾液は、お口の健康を守るためになくてはならない存在です。主な働きは以下の通りです。
- 食べかすや細菌を洗い流す「自浄作用」
- 細菌の繁殖を抑える「殺菌・抗菌作用」
- 酸で溶けかけた歯の表面を修復する「再石灰化促進」
- 口腔内の酸を中和し、歯を守る「pH緩衝作用」
「唾液はお口のバリア」と私はよく患者さんにお話しするのですが、花粉症で鼻がつまると自然と口呼吸になり、口腔内の水分が蒸発して唾液が減少します(ドライマウス)。
唾液が少なくなると、このバリア機能が失われ、虫歯菌や歯周病菌が繁殖しやすい環境が整ってしまいます。
就寝中の口呼吸が特に危険
唾液の分泌量は、就寝中には日中の3〜5分の1程度にまで減少します。
そこに花粉症による口呼吸が重なると、お口の中はひと晩中ほぼ無防備な状態になってしまいます。
「朝起きたら口がカラカラ」「なんとなく口臭が気になる」という場合は、就寝中の口呼吸が起きているサインかもしれません。寝る前の丁寧な歯磨きと、寝室の加湿が特に大切です。
お子さんがいる方は、ぜひお子さんの様子も観察してみてあげてください。
口を開けて眠っている、朝起きると唇が乾いているといった様子があれば、口呼吸が習慣になっているかもしれません。
花粉症の薬(抗ヒスタミン薬)が口腔内に与える影響と注意点
花粉症の治療でよく処方・使用されるのが「抗ヒスタミン薬」です。
くしゃみや鼻水を抑える頼もしい存在ですが、お口への影響も知っておくと安心です。
抗ヒスタミン薬の「口が乾く」副作用
抗ヒスタミン薬には、アレルギー症状を抑える主作用のほかに、唾液の分泌を抑制する副作用があります。
これは「抗コリン作用」と呼ばれる薬の性質によるもので、口の渇きとして現れます。
薬の世代によって、副作用の程度は異なります。
| 種類 | 主な薬の例 | 口の渇き・眠気 |
|---|---|---|
| 第一世代 | ポララミン、ヒベルナ など | 強い傾向がある |
| 第二世代 | アレグラ、アレジオン、クラリチン など | 比較的軽減されている |
第二世代の薬でも、程度の差こそあれ口腔乾燥が起こる可能性はあります。
薬の変更や量の調整については、必ず担当の医師や薬剤師にご相談ください。
薬を飲んでいるときの口腔ケアの注意点
口腔乾燥を感じているときは、いつも以上に丁寧なお口のケアを心がけましょう。
- 水・白湯・お茶(無糖)をこまめに飲んで口腔内を潤す
- ジュースやスポーツドリンクは糖分が多く、ドライマウス時は虫歯リスクが高まるため注意
- フッ素配合の歯磨き粉を使用し、再石灰化を助ける
- キシリトールガムを噛んで唾液の分泌を促す
- アルコールフリーの洗口液を活用し、口腔内の清潔を保つ
当院でも、花粉症シーズンにはこうした口腔ケアグッズについてのご案内を行っています。
「何を使えばいいか分からない」という方は、お気軽にスタッフまでお尋ねください。
花粉症シーズンに歯科衛生士がすすめる!口腔トラブルを防ぐセルフケア5つの習慣
「具体的に何をすればいいの?」という方のために、花粉シーズンに特に意識していただきたい5つのケア習慣をご紹介します。
小さな習慣の積み重ねが、トラブルの予防に大きな差を生みます。
花粉症期間中のおすすめ口腔ケア習慣
STEP 1|起床直後に歯磨きをする
就寝中に増えた細菌を、起き上がってすぐに洗い流します。食事の前に磨くのが理想です。
STEP 2|こまめに水分補給をする
水・白湯・お茶を日中1.5〜2L程度を目安に少量ずつ補給して、口腔内を潤します。
STEP 3|就寝前に丁寧な歯磨き+フロスを行う
一番大切な習慣です。
口腔内が乾燥する前に細菌を除去することが、夜の虫歯・歯周病リスクを抑えるポイントです。
STEP 4|寝室の加湿をする
加湿器を活用して室内の湿度を50〜60%に保つと、就寝中の口腔乾燥をある程度防ぐことができます。
我が家でも花粉の時期は加湿器が欠かせません。
STEP 5|キシリトールガムを噛む
キシリトールガムを噛むことで唾液の分泌が促されます。
虫歯リスクのない甘味料を使っているため、ドライマウス対策として安心して活用できます。
| ケア習慣 | タイミング | ポイント |
|---|---|---|
| 歯磨き(フッ素入り) | 起床直後・就寝前 | 2分以上かけて丁寧に |
| フロス・歯間ブラシ | 就寝前 | 歯ブラシが届かない場所の汚れをケア |
| 水分補給 | 日中こまめに | 無糖の水・白湯・お茶を選ぶ |
| キシリトールガム | 食後や口の渇きを感じたとき | 唾液分泌を促進 |
| 加湿器 | 就寝中 | 室内湿度50〜60%を目安に |
花粉症の時期に歯科治療を受けるときの注意点
鼻づまりが強い状態で口を長時間開けたまま治療を受けるのは、なかなか大変ですよね。
当院では、「花粉症がひどくて」とお伝えいただければ、治療中に適宜休憩を入れたり、一回の治療時間を短く設定したりする対応をしています。
遠慮なく事前にスタッフへお声がけください。
花粉症の歯痛・口腔トラブルはどの科を受診すればいい?
「歯医者に行くべき?それとも耳鼻科?」という疑問を持つ方はとても多いです。
シンプルな基準をお伝えします。
「まずは歯科へ」が基本
歯に痛みがある場合は、まず歯科医院でレントゲンやCT検査を受け、「虫歯や歯周病など、歯そのものに原因がないか」を確認することが大切です。
歯科で検査を受けて歯に問題がなければ、耳鼻咽喉科での副鼻腔炎の治療が根本的な解決につながります。
場合によっては、歯科と耳鼻科を並行して受診することで、より早く原因を特定できることもあります。
副鼻腔炎が原因の歯痛であれば、副鼻腔の炎症が改善されるにつれて歯の痛みも和らいでいくことがほとんどです。
ただし、副鼻腔炎の影に虫歯や歯周病が進行しているケースも少なくないため、歯科での確認は必ず行ってください。
「どちらに行けばいいか分からない」と迷ったときは、まずかかりつけの歯科医院にご相談いただくのが安心です。
野田阪神・海老江エリアの皆さん、気になることがあればいつでも当院にお声がけください。
よくある質問
Q: 花粉症で歯が痛くなるのはなぜですか?
花粉症による副鼻腔炎(上顎洞炎)が原因です。
鼻のまわりにある副鼻腔のうち、上の奥歯に非常に近い「上顎洞」が炎症を起こすことで、歯の根元や神経に圧力が伝わり、虫歯がなくても歯に痛みを感じることがあります。
Q: 花粉症で歯が痛い場合、歯医者と耳鼻科のどちらに行くべきですか?
まずは歯科医院でレントゲンやCT検査を受け、虫歯や歯周病などの歯の原因がないことを確認するのがおすすめです。
歯に原因がなければ、耳鼻咽喉科での副鼻腔炎の治療が根本的な解決につながります。
迷ったら、まずかかりつけの歯科にご相談ください。
Q: 花粉症の薬を飲むと口が乾くのですが、歯への影響はありますか?
花粉症の治療薬(抗ヒスタミン薬)には、唾液の分泌を抑制する副作用があります。
唾液が減ると虫歯・歯周病のリスクが高まるため、こまめな水分補給(水・お茶)、丁寧な歯磨き、キシリトールガムの活用が効果的です。
薬の変更や調整については、担当の医師・薬剤師にご相談ください。
Q: 副鼻腔炎が治れば、歯の痛みも自然に治りますか?
副鼻腔炎が原因の歯痛であれば、炎症が改善されるにつれて歯の痛みも和らいでいく場合がほとんどです。
ただし、同時に虫歯や歯周病が進行しているケースもあるため、歯科での確認も合わせて行っておくことをおすすめします。
Q: 子どもが花粉症で口呼吸をしているようです。歯並びへの影響はありますか?
はい、成長期(とくに6〜11歳ごろ)に口呼吸が習慣化すると、舌の位置が下がって上顎の発育が妨げられ、歯並びや顎の形に影響が出ることがあります。
「いつも口が開いている」「朝起きると唇が乾いている」という様子が気になったら、早めに歯科や耳鼻科に相談することで、将来の大きなトラブルを防げるケースが多いです。
Q: 花粉症の時期に気をつけるべき口腔ケアはありますか?
起床直後の歯磨き、就寝前の丁寧な歯磨き+フロス、日中のこまめな水分補給(水・白湯・お茶)、加湿器の活用、キシリトールガムによる唾液促進が特に有効です。
いつも以上に意識してケアしていただけると、この時期の口腔トラブルの予防につながります。
Q: 花粉症の季節になると毎年同じ奥歯が痛くなります。これは副鼻腔炎ですか?
毎年同じ時期に同じ症状が繰り返される場合は、副鼻腔炎(上顎洞炎)の可能性があります。
ただし、慢性的な虫歯や歯周病が隠れているケースもあるため、一度歯科でレントゲンやCT検査による確認をしておくと安心です。
まとめ
花粉症と歯の痛みは、一見まったく無関係に見えて実は深くつながっています。
副鼻腔炎による歯痛、口呼吸が招くドライマウスと虫歯・歯周病リスクの上昇、花粉症薬の副作用によるお口の乾燥など、花粉シーズンはお口へのダメージが重なりやすい時期です。
だからこそ、毎日の丁寧な口腔ケアが大切になります。
今回ご紹介した5つのケア習慣を意識するだけでも、この時期のトラブル予防に大きな差が生まれます。
それでも気になる症状が続く場合は、ぜひ早めにご相談ください。
野田阪神・海老江エリアの皆さん、花粉シーズンも一緒にお口の健康を守っていきましょう。
当院では花粉症の時期に合わせた口腔ケアのご相談も承っています。
些細なことでもお気軽にお声がけくださいね。
