「今日はCTを撮りましょう」「顕微鏡を使って治療しますね」
診察室でこう言われて、何が違うのかピンとこないまま治療が進んだ経験はありませんか?
歯の型取りで「オエッ」となるのが苦手で、矯正に踏み出せずにいる方もいるかもしれませんね。
当院にはマイクロスコープ、歯科用CT、iTero(アイテロ)という3つの精密治療設備があります。
それぞれで「何が見えて、何ができるのか」を、ふだん診察室でお話ししている言葉でお伝えします。
【この記事の結論】精密治療設備でできることと費用の5つのポイント
- 「マイクロスコープ」は患部を拡大し、虫歯や根の治療で削る範囲や汚れの取り残しを減らすために使います。
- 「歯科用CT」は骨・歯の根・神経の位置関係を立体で確認し、通常のレントゲンでは判断が難しい場合に使います。
- 「アイテロ」は粘土状の材料を使わず約2〜3分で歯型を記録でき、矯正後の歯並びのイメージも確認できます。
- 歯科用CTは「必要な場合だけ」撮影し、アイテロの型取りでは放射線を使いません。
- 費用と保険適用は「治療内容によって異なり」、当院のアイテロによるマウスピース矯正の型取りは自由診療です。

精密治療の設備とは?「見る・拡大する・記録する」3つの役割
肉眼と2Dレントゲンだけでは見えないもの
歯の根の中には「根管」という細い管が通っています。
根管は直径1mm以下で、曲がっている部分もあります。
歯と歯の間の小さな虫歯、骨に埋まった親知らずの向き、歯周ポケットの奥の歯石。
どれも肉眼と平面のレントゲンだけでは、はっきりつかみにくいものばかりです。
当院は「出来る限り抜かない削らない治療計画」を方針にしています。
削る量を減らすには、まず正確に見ること。精密治療の設備は、そのための道具です。
3つの設備の役割分担
| 設備 | 役割 | 主な場面 | 患者さんにとっての変化 |
|---|---|---|---|
| マイクロスコープ | 拡大する | 虫歯・根の治療・歯周病治療 | 取り残しを減らし、削る量を最小限に |
| 歯科用CT | 立体で見る | 親知らず・インプラント・複雑な根の診断 | 症状の原因を治療前に把握できる |
| iTero | 記録する | 矯正の型取り・シミュレーション | 粘土の型取りなし。2〜3分でその場で3D確認 |
CTで骨と根の形を把握する、マイクロスコープで拡大しながら処置する、iTeroで歯型を記録する。3つは役割が異なり、治療内容に応じて使い分けています。
マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)でできること:肉眼の数倍〜20倍以上の拡大視野
拡大鏡(ルーペ)との違いと倍率の目安
「歯医者の顕微鏡」と呼ばれることもあるマイクロスコープは、手術用の顕微鏡です。
歯科医師がよく使う拡大鏡(メガネ型のルーペ)が数倍程度なのに対し、マイクロスコープはメーカーや設定によって数倍から20倍以上まで拡大できます。
ライカ社のM320という機種では、6.4倍から40倍まで5段階で切り替える仕様がカタログに載っています。
明るく照らしながら拡大して観察でき、カメラとモニターを備えた構成なら、その画像を患者さんと一緒に見ることもできます。
虫歯・根管治療・歯周病治療で変わること
日本顕微鏡歯科学会は、顕微鏡を使うと「肉眼では見逃してしまうような微細な部分も確認できる」ため、できるだけ歯を削らずに必要最小限の範囲だけを治療しやすくなると説明しています。
同学会が挙げている場面は次の通りです。
- 虫歯治療。肉眼では見えにくい初期の虫歯を見つけ、削る範囲を最小限にとどめる
- 根管治療(歯の根っこの治療)。狭く複雑な根管の中を見ながら、汚れの取り残しを減らす
- 歯周病治療。歯ぐきの深い部分や歯の根に付いた歯石を取り除く
- 詰め物・被せ物。細かい段差を確認しながら精密に装着する
ネットで見かける「成功率が59%から94%に上がる」という数字は、歯根端切除という外科的な治療で、器具や材料も異なる治療法どうしを比べたものです。
顕微鏡だけの効果や、ふつうの根管治療の成功率を示す数字ではありません。
「必ず治る」とは私たちも言いません。
神経を残すか抜くかの判断は、歯の神経、抜くべきか残すべきか?で詳しく書いています。
当院でのマイクロスコープの使い方と衛生士の視点
当院では、マイクロスコープで肉眼では見えない部分まで精密な治療を行っています。
歯は一度削ったり神経を取ったりすると、二度と元には戻せません。
「10年後に後悔しないで済む治療」を選ぶために、見える範囲を広げることが欠かせないと考えています。
衛生士の立場で感じるのは、見えることで患者さんに説明できることが増える点です。
モニターで一緒に画像を見ると、「だからここを治すんですね」と納得して治療に入っていただけます。
歯科用CTでできること:レントゲンでは見えない骨と根を立体で見る
パノラマ・デンタルとの違い(平面か立体か)
歯医者で撮るレントゲンには、お口全体を1枚に写す「パノラマ」と、数本の歯を拡大して写す「デンタル」があります。
どちらも平面の影絵のようなもので、奥行きは写りません。
歯科用CTは、コーンビームという方式でお口の周囲から複数方向のX線画像を撮り、コンピュータで断面や立体(3D)の画像に組み立てます。
骨の厚み、神経が通る管との位置関係、根の本数や曲がり方を立体で評価できます。
当院のCTは360度の撮影で12秒、180度なら6秒と、撮影自体は短時間で終わります。
毎回撮るものではなく、パノラマやデンタルでは判断が難しいときに限って撮影します。
保険のルールでも「通常のレントゲンで診断が困難な場合」が条件です。
CTが役立つ場面(親知らず・インプラント・複雑な根・根の先の病巣)
CTが有効な場面として次のようなケースが挙げられます。
- 埋まった親知らずと、下あごの神経(下顎管)との位置関係を確認するとき
- インプラントを埋める位置や角度を計画するとき
- 上あごの奥歯など、根の本数や形が複雑な歯の根管治療をするとき
- 根の先にできた病巣(根尖病変)の広がりを診断するとき
歯周病で減った骨の状態や歯の根のひび、顎関節の骨の状態を調べる際にも役立つことがあります。
親知らずを抜くか迷っている方は、親知らずは抜くべき?抜かない選択肢もある?も合わせてどうぞ。
当院の歯科用CT「SOLIO XZII」と診断の流れ
当院が導入しているのは、アーム型X線CT診断装置「SOLIO XZII」です。
インプラント治療では、このCTのデータをもとにコンピュータ上で顎の骨を立体的に再現し、最も適切な位置・サイズ・深さをシミュレーションしてから手術に入ります。
設備の詳細はCT治療のページにまとめています。
「被ばくが心配」という声への答えは、このあと数字でお話ししますね。
iTero(3D光学スキャナー)でできること:粘土を使わない歯の型取り
従来の型取りとの違い(2〜3分・印象材なし・放射線なし)
歯の型取りといえば、粘土のような材料(印象材)をお口に入れて、固まるまで数分間じっとしている方法を思い浮かべる方が多いと思います。
この間に「オエッ」となる嘔吐反射が出やすく、「型取りが怖くて矯正をあきらめていた」という患者さんに何人も出会ってきました。
iTeroはペン型のスキャナーでお口の中を撮影するだけの3D光学スキャナーです。
スキャンは2〜3分ほど。
印象材をお口に入れないので呼吸のしづらさや異物感が少なく、材料が固まるのを待つ静止時間もいりません。
感じ方には個人差があるので、気分が悪くなったときは遠慮なく教えてくださいね。
インビザラインとの連携と治療後シミュレーション
当院ではiTeroを、マウスピース矯正「インビザライン」の型取りに使っています。
従来の印象材による歯型は海外のアライン社へ輸送する必要がありましたが、iTeroならデータをインターネットで送れるので、その分だけ早く治療を始めることが可能です。
当院のページでは1〜2週間ほどが目安としていますが、症例や製作状況によって変わります。
歯型の3D画像はその場でモニターに映り、治療後のイメージをシミュレーションで見て納得してから始められます。
大人の矯正を考えている方は、大人の矯正はインビザラインが主流に!も参考にしてください。
当院でのiTeroの流れ
- iTeroでお口の中を撮影する(2〜3分)
- データをアライン社へ送信し、マウスピースを作製する
- マウスピースが完成したら治療を開始する
詳しくは3D光学スキャナーiTeroのページとインビザラインのページをご覧ください。
被ばく量と費用はどうなる?精密治療設備の安全性と保険適用
歯科用CTの被ばく量を身近な数値と比べる
CTと聞くと真っ先に被ばくが気になる方は多いと思います。
私にも5歳の娘がいるので、その気持ちはよく分かります。数字で見てみましょう。
| 項目 | 放射線の量(目安) |
|---|---|
| デンタルX線 1枚 | 0.01ミリシーベルト |
| パノラマX線 1回 | 0.03ミリシーベルト |
| 歯科用CT 1回 | 0.1ミリシーベルト |
| 東京〜ニューヨーク 飛行機1往復 | 0.2ミリシーベルト |
| 医科用CT 1回 | 6.9ミリシーベルト |
| 日本人が自然から受ける放射線 1年分 | 2.1ミリシーベルト |
歯科用CT1回の0.1ミリシーベルトは、東京都歯科医師会の資料「歯科治療のX線撮影は安全です!」に載っている概数です。
自然放射線の1年分2.1ミリシーベルトは、環境省の「年間当たりの被ばく線量の比較」によるものです。
歯科用CT1回は、自然に浴びる1年分の20分の1ほどです。
ただし0.1ミリシーベルトは資料に示された一例で、実際の被ばく量は機器や撮影範囲、条件によって変わります。
とはいえ「少ないから何度でも」とは考えていません。
日本歯科放射線学会の指針は、不要不急の撮影は行わず、撮る場合は範囲を最小限にし、お子さんには大人の半分程度の線量にすることを求めています。
撮影の必要性と条件は、そのつど歯科医師が判断します。妊娠中または妊娠の可能性がある方は事前にお知らせください。
検査の必要性や代わりの方法を検討し、ご説明のうえ判断します。
詳しくは妊娠中の歯科治療、本当に安全?をどうぞ。
保険が使える範囲(CT撮影・顕微鏡加算・光学印象)
「精密な設備=全部自費」と思われがちですが、保険で使える場面もあります。
2026年6月以降のルールで整理すると、次の通りです。
- 歯科用CT:
保険診療の対象となる病状で、パノラマやデンタルでは診断が難しく、CT撮影の必要性が認められる場合に保険が使えます。
撮影料・診断料・電子画像管理加算を合わせて1,170点(3割負担で3,500円ほどが目安)。
診断料は月1回の算定です- マイクロスコープ:
施設基準を届け出た医院で、CTで根の形を確認したうえで顕微鏡を使い、根管が3本以上(樋状根を含む)の歯の根管充填を行った場合などに「手術用顕微鏡加算」400点が加わります。
顕微鏡を使うたびに付く料金ではありません- 光学印象:
口腔内スキャナーでCAD/CAMインレー(白い詰め物)の型取りをする光学印象が2024年6月から保険適用になり、2026年6月の改定でCAD/CAM冠にも広がりました(1歯150点。施設基準などの条件あり)。
当院でiTeroを使うインビザラインの型取りは自由診療の一部です
点数や金額はあくまで目安で、治療内容によって変わります。
改定の内容は厚生労働省の令和8年度診療報酬改定の概要【歯科】で公開されています。
当院での費用の考え方
設備を使うこと自体で追加料金がかかるかどうかは、治療の内容によって異なります。
当院では治療を始める前に、保険が使えるのか、自費ならいくらなのかを必ずご説明しています。
矯正の料金は歯列矯正の料金表にまとめていますし、保険診療でもクレジットカードをお使いいただけます。
「聞きづらいな」と思うことほど、遠慮なく聞いてくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q: 歯科用CTの被ばく量は子どもや妊娠中でも大丈夫ですか?
東京都歯科医師会の資料では歯科用CT1回の線量は約0.1ミリシーベルトとされ、日本人が1年間に自然から受ける2.1ミリシーベルトと比べても小さい値です(機器や条件で変わります)。
お子さんは必要なときだけ範囲を絞って撮影します。
妊娠中または妊娠の可能性がある方は事前にお知らせください。
必要性を検討し、ご説明のうえ判断します。
Q: マイクロスコープを使うと治療費は高くなりますか?
保険で顕微鏡の加算が付くのは、根管が3本以上ある歯の根管充填など条件を満たす場合に限られます。
それ以外の治療で追加料金がかかるかどうかは治療内容によって異なりますので、治療前にご説明します。
Q: iTeroの型取りは「オエッ」となりませんか?痛みや時間は?
印象材をお口に入れないので、嘔吐反射は出にくくなります。
スキャンは2〜3分ほどで、X線も使いません。
お子さんにも使えます。
感じ方には個人差があるので、つらいときはその場で教えてください。
Q: 歯医者に行くたびにCTを撮るのですか?
撮りません。
親知らずと神経の位置、インプラントの計画、複雑な根の形など、パノラマやデンタルでは判断が難しいときに限って撮影します。
日本歯科放射線学会の指針でも、通常の経過観察にCTは使わず、再発が疑われ治療方針の判断に必要な場合などに撮影を検討するとされています。
Q: マイクロスコープを使えば根管治療は必ず成功しますか?
「必ず」とは言えません。
結果は歯の状態や、治療を最後まで続けられるかにも左右されます。
日本歯内療法学会が2026年に公表した調査では、歯の神経を取る治療を受けた経験のある人のうち、30代の約半数が痛みが消えた時点で通院を中断した経験があると答えています。
痛みが消えても最後まで通うことが近道です。
まとめ
マイクロスコープは「拡大する」、歯科用CTは「立体で見る」、iTeroは「記録する」。
3つがそろうことで、今まで見えなかったものが見え、削る量を減らし、型取りの負担も減らせます。
設備は目的ではなく、「出来る限り抜かない削らない」ための手段だと私たちは考えています。
気になることがあれば、診察室のモニターで一緒に画像を見ながらご説明します。
当院はJR海老江駅から徒歩1分、地下鉄野田阪神駅から徒歩3分。土日祝も診療しています。
分からないことは、いつでもご相談くださいね。
