「下の前歯が重なって生えてきたんですけど、大丈夫でしょうか」
仕上げ磨きのときに気づいて、心配になって来てくださる保護者の方はとても多いです。
そのあとに続く言葉が、だいたい同じなんです。
「私の育て方が悪かったんでしょうか」
そんなことはありません。
歯並びには生まれ持った要素も関わっていますし、原因はひとつではないからです。
この記事では、歯並びが乱れる原因と、ご家庭で見ていただきたいチェックポイントをまとめました。

子供の歯並びが悪くなる主な原因
歯が重なっている部分は歯ブラシの毛先が届きにくく、虫歯や歯ぐきの炎症が起こりやすくなります。
見た目だけの話ではありません。
日本小児歯科学会は、歯並びやかみ合わせが悪くなる主な要因として次のようなものを挙げています。
- 虫歯などによる乳歯の早期喪失
- 歯と顎の大きさの不調和
- 遺伝的要因
- 指しゃぶり、舌で押す癖、口呼吸、頬杖、うつぶせ寝などの習癖や生活習慣
遺伝はそのうちのひとつ。すべてを決めているわけではありません。
歯並びは遺伝でどこまで決まるのか
遺伝が関わる範囲は、思われているより限定的です。
日本矯正歯科学会と日本小児歯科学会が2025年6月に連名で公表した文書には、「上顎前突、下顎前突の一部には遺伝性要因がある」と書かれています。
出っ歯や受け口の一部について、という限定つき。
「歯並びの7割は遺伝」といった数字も出回っていますが、公的な調査で示されたものは見当たりません。
無視できないのは、歯と顎の大きさのバランスです。
歯が大きめで顎が小さめだと、並ぶ場所が足りなくなります。
努力でどうにかなるものではありません。
だからこそ、育て方のせいだと自分を責める必要はないんです。
指しゃぶり・頬杖・うつぶせ寝など毎日の癖
ひとつひとつは小さな癖でも、毎日続くと歯や顎に同じ方向の力がかかり続けます。
- 指しゃぶり
- 舌で前歯を押す
- 唇や爪を噛む
- 頬杖をつく
- うつぶせ寝、いつも同じ向きの横向き寝
- やわらかいものが中心で、噛む回数が少ない食事
先ほどの学会の文書にも、睡眠時の姿勢や姿勢の不良は「歯列に影響を与えている場合がある」と記されています。
必ず影響するとは書かれていません。
それでも、力の偏りは減らしておきたいところです。
当院でよく見かけるのが、食事中ずっとテレビの方向を向いているお子さま。
体がねじれて、いつも同じ側だけで噛んでいることがあります。
乳歯の虫歯と、早すぎる抜け方
乳歯はいずれ抜ける歯ですが、永久歯のための場所取り役という役目があります。
虫歯で乳歯を予定より早く失うと、部位や時期によっては、永久歯が生えるためのスペースが減ることがあります。
日本小児歯科学会が挙げる要因でも、乳歯の早期喪失は最初に出てきます。
ただ、影響の出方は歯の場所や失った時期によって違いますし、乳歯の虫歯が必ず歯並びに響くわけでもありません。
大切なのは早めに見つけること。
虫歯の治療もお気軽にご相談くださいね。
口呼吸(お口ぽかん)と舌の位置
「気づくといつも口が開いているんです」。このご相談も多いです。
口呼吸と歯並びの関係はどこまで分かっているか
正直にお伝えすると、口呼吸が歯並びを悪くする、と言い切れるところまでは分かっていません。
口呼吸のあるお子さまに歯並びの乱れが多いという報告はあります。
ただ、口呼吸が原因なのか、もともとのお口の形が口呼吸につながっているのか、分けきれていません。
日本歯科医学会が2024年3月に公表した文書では、口呼吸の有無と、機能的な要因による歯列・かみ合わせの異常が、それぞれ確認項目として挙げられています。
歯科では、口呼吸を歯並びと切り離さずに見ている、ということですね。
口を閉じられない原因が鼻にあるケース
何度声をかけても口が開いてしまうお子さまは、閉じたくても閉じられない状態かもしれません。
鼻づまり、アレルギー性鼻炎、アデノイドや扁桃の肥大があると、鼻で息をしたくてもできないことがあります。
この場合、本人の意志や声かけだけでは改善しにくいことがあります。
「毎日何十回も口を閉じなさいと言っているのに」という方には、耳鼻咽喉科という選択肢をお伝えしています。
鼻づまりが背景にあるなら、そちらを診てもらうのが先だからです。
舌の正しい位置はどこか
お口を閉じているとき、舌先は上の前歯の少し後ろ、ぷくっとしたふくらみに軽く触れているのが目安とされています。
ご家庭では「お口を閉じたとき、ベロの先っぽはどこにある?」と聞いてみてください。
答えだけで判断はできませんが、「下の歯の裏」「どこにもついてない」に加えて、口が開きやすい、飲み込みにくい、発音が気になるといった様子があれば、一度歯科でご相談ください。
歯科では舌や口まわりの筋肉の使い方を練習することもあります。
ただ、これは食べる・話す機能を育てるためのもの。
日本小児歯科学会も2026年1月に、こうした治療は歯並びの改善を目的としたものではないという注意喚起を出しています。
家庭でできる子供の歯並びチェックポイント
ご家庭で見ていただきたいところをまとめました。
正面から写真を撮って前歯を見る
いちばん手軽なのは、お子さまのお口の写真を1枚撮ることです。
- 奥歯を軽く噛んでもらう
- 唇だけを「イー」の形に開いてもらう
- 正面からまっすぐ1枚撮る
撮れたら、こんなところを見てみてください。
- 上の前歯が下の前歯より前に出ているか(下が前なら反対咬合の可能性があります)
- 前歯が重なったり、ねじれて生えていたりしないか
- 上下の前歯の真ん中の線が大きくずれていないか
- 噛み合わせたとき、上下の前歯のあいだに隙間が空いていないか
写真にしておくと半年後、1年後と見比べられます。
生え変わりの時期は変化が早いので、記録があるとご相談もスムーズです。
定規で測る必要はありません。
乳歯のすき間は、むしろ良いサイン
「乳歯がすきっ歯で心配で」とご相談を受けることがあります。
これ、実は逆なんです。
永久歯は乳歯より大きい歯です。
乳歯の時期にすき間があるということは、大きな永久歯が並ぶ場所が用意されているということ。
日本小児歯科学会のこどもたちの口と歯の質問箱でも、3歳の段階でのすきっ歯は正常で、すき間があるほうが都合がよいと説明されています。
心配なのはむしろ反対で、乳歯がぴったり詰まって並んでいる場合。
生え変わりのときに場所が足りず、歯が重なることがあります。
とはいえ顎はこれから成長しますから、すぐに問題というわけではありません。
逆に、すき間があれば必ず足りるとも限らないので、気になる場合は個別に確認します。
唇・食事・寝ているときに見えるサイン
私たち衛生士は、診療台でお口を見るとき、歯そのもの以外もあわせて確認しています。
ご家庭で見られるものを挙げますね。
- 力を抜いているときに、上下の唇が自然に閉じているか
- 上唇がいつも乾いていたり、荒れやすかったりしないか
- 上の前歯の先のほうに、茶色っぽい着色がつきやすくないか
- 食事中に噛む音がしているか、丸のみになっていないか
- 寝ているときに口が開いていないか、いびきをかいていないか
前歯の着色は見落とされがちです。
口が開いて乾く部分は汚れが残りやすいんですね。
仕上げ磨きのときに見てみてください。
ただ、どのサインも単独で口呼吸と決まるものではありません。
そしてもうひとつ。
ご家庭でのチェックは診断ではありません。
歯並びやかみ合わせの診断、矯正が必要かどうか、始める時期をどうするかは、歯科医師が診察して判断します。
家庭でできる歯並びの予防
「今からできることはありますか」とよく聞かれます。
特別なことは要りません。
ただ、これから挙げることで歯並びを確実に予防できるわけではない、という点は先にお伝えしておきますね。
鼻呼吸の環境と、よく噛める食事
鼻が詰まりやすいお子さまは、耳鼻咽喉科で診てもらうところから。
食事は、いろいろな食感を経験できるといいですね。
年齢と噛む力に合った硬さ・大きさで、無理のない範囲で。
硬いものを食べれば顎が大きくなって歯並びが整う、というところまでは分かっていないので、無理に食べさせる必要はありません。
あとは飲み物のタイミング。
口の中に食べ物があるうちにお茶で流し込む癖が気になるなら、コップを手元に置かず、食べ終わってから水分をとる方法もあります。
年齢や体調で必要な量は違うので、そこは無理をさせずに。
食事中の姿勢と足のつく椅子
足が床や足置きについていると、食事中の姿勢が安定します。
お子さま用の椅子は足置きの高さを変えられるので、かかとがつく位置に合わせてみてください。
姿勢が安定すると食べやすくなりますが、それで歯並びが予防できるかどうかまでは分かっていません。
頬杖やうつぶせ寝は、気づいたときに声をかける程度で大丈夫です。
寝相は本人にコントロールできませんから、厳しく言っても親子ともに疲れてしまいます。
ひとつだけ。
保護者の方ご自身が頬杖をついていると、お子さまがそれを真似ることがあります。
「私もやってました」と苦笑いされる方、けっこう多いです。
指しゃぶりは何歳まで?叱らない卒業の進め方
3歳頃までの指しゃぶりは、特に禁止しなくてよいとされています。
日本小児歯科学会は、3歳頃までの指しゃぶりについて、特に禁止する必要がないものであることを保護者に話すのが大切だとしています。
4歳を過ぎても頻繁に続く場合は、小児科医・小児歯科医・臨床心理士が連携して対応する必要があるとしています。
学会が挙げている進め方はこちらです。
- 生活のリズムを整える
- 外遊びや運動でエネルギーを発散させる
- 手や口を使う遊びの機会を増やす
- 寝つくまで手を握る、絵本を読むなどのスキンシップで安心させる
指しゃぶりは、お子さまにとって安心するための行動です。
叱ってやめさせようとするより、学会が挙げているこうした工夫のほうが、親子ともに取り組みやすいと思います。
歯科に相談するタイミングと健診で指摘されたときの対応
「今すぐ矯正を勧められるんじゃないか」と身構えて来られる方がいます。
相談しただけで治療が決まるわけではありません。
歯科医師が状態を確認して、必要性や時期、経過観察という選択肢をご説明します。
どうぞ気軽にお越しくださいね。
学校歯科健診で「歯列・咬合」を指摘されたら
健診の紙に印がついていても、すぐに矯正が必要という意味ではありません。
文部科学省の学校保健統計調査の用語の解説によると、「歯列・咬合」は不正咬合の疑いがあり、専門医による診断が必要とされた者を指します。
「一度診てもらってください」というお知らせであって、治療が決まったわけではないんです。
3歳児健診でも、該当する場合は母子健康手帳に経過観察と記載し、かかりつけ歯科医への相談を促す運用です。
まずは相談する。それで大丈夫です。
歯科への相談は何歳から?
「何歳になったら」と待つ必要はありません。気になった時点でどうぞ。
日本小児歯科学会は、保育園や幼稚園での検診は年に1〜2回なので、小児歯科医院での定期健診もあわせて受けるとよいとしています。
そして、歯科で「様子を見ましょう」と言われて不安になる方へ。
あれは「何もしない」ではなく「変化を追いかける」という意味です。
指示された間隔で通っていただければ、歯科医師が必要な時期を判断しやすくなります。
当院の小児歯科では、虫歯のチェックとあわせて、歯の生え変わりや歯並び・かみ合わせも確認しています。
よくある質問(FAQ)
Q: 子供の歯並びは自然に治りますか?
自然に整っていくものと、そうでないものがあります。
乳歯の時期のすき間は正常ですし、生え変わりで並びが変わることもよくあります。
ただ、前歯の前後関係が逆の場合などは、待っていて整うとは限りません。
Q: 歯並びが悪いのは親のせいでしょうか?
いいえ、育て方だけで決まるものではありません。
顎と歯の大きさのバランスのように、生まれ持った要素が関わっています。
学会も、遺伝性要因があるのは出っ歯や受け口の一部について、という書き方をしています。
Q: 乳歯に隙間がありません。大丈夫でしょうか?
生え変わりのときにスペースが足りなくなることがあります。
ただ、顎はこれから成長しますので、今すぐ問題というわけではありません。
前歯の生え変わりが始まる時期は確認の機会になりますが、受け口や乳歯が早く抜けたなど気になる点があれば、それを待たずにご相談ください。
Q: 指しゃぶりは何歳までなら大丈夫ですか?
3歳頃までは特に禁止しなくてよいとされています。
4歳を過ぎても続くようなら、専門家にご相談ください。
無理にやめさせるのではなく、手を使う遊びやスキンシップを増やす方法が学会から示されています。
Q: 口がいつもぽかんと開いています。どうすればいいですか?
まず、鼻で呼吸できているかを確かめてみてください。
鼻づまりや扁桃の肥大があると、閉じたくても閉じられません。
その場合は耳鼻咽喉科という選択肢も。
声かけだけで解決しようとしなくて大丈夫ですよ。
まとめ
歯並びの原因はひとつではありません。
生まれ持った顎と歯のバランス、毎日の癖、乳歯の状態。いくつもの要素が重なっています。
犯人探しをするより、今見られるところを見て、気になったら相談する、そのほうが現実的です。
正面から写真を1枚撮る。唇が自然に閉じているか見る。
今日からできるのは、そのくらいで十分だと思います。
未来のお子さまの歯のために、今できることを少しずつ。
お子さまの歯並びで気になることがあれば、豊中本町歯科クリニックまでお気軽にご相談くださいね。
「お子様一人ひとりが宝物」をモットーに、歯科医院に慣れることから一歩ずつサポートいたします。
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診療時間・アクセスは阪急豊中駅から徒歩3分です。
