定期検診のお知らせハガキ、引き出しにしまったままになっていませんか?
野田阪神歯科クリニックで歯科衛生士主任をしています。
総合病院の歯科口腔外科で3年、当院で7年。
抜歯に来られる方も、何年も通い続けてくださる方も見てきました。
通う人と通わない人の口の中は、1年ではほとんど変わりません。
それが5年、10年たつと、はっきり分かれていきます。
この記事では、公的な長期データと現場の実感から、その「10年後の差」をお伝えします。
途中で通うのをやめてしまった方にも、読んでいただけたらうれしいです。
【この記事の結論】定期検診で10年後の歯を守る4つのポイント
- 定期的に通う人は、問題が起きたときだけ通う人より「10年間で失う歯が少ない傾向」があります。
- 虫歯や歯周病は痛みなく進むことがあるため、「痛くなる前の検診」が早期発見につながります。
- 歯を守るには、検診に加えて「毎日のセルフケア」と「口の状態に合った通院間隔」が必要です。
- 何年も通っていなくても再開でき、予約時は「〇年ぶりです」と伝えるだけで大丈夫です。

定期検診に通う人・通わない人、10年後の歯の本数の差とは?
痛いときだけ歯医者に行く人は、継続して通う人に比べて、10年で失う歯が多い傾向があります。
歯を失う主な原因は、自覚のないまま進む歯周病と虫歯。
定期検診は、こうした変化に早く気づくための機会です。
10年間で失う歯の本数、長期データが示す違い
8020推進財団の研究「10年間メインテナンス受診者の歯の喪失状況について」(平成26年度)は、歯科医院に10年間通っている50〜79歳の1,400人について、診療の記録から過去10年間に失った歯の本数を調べたものです。
男性では、問題が起きたときだけ来院する人が1人平均2.2本だったのに対し、非定期的に来院する人は1.2本、定期的に来院する人は1.5本でした。
厚生労働省のe-ヘルスネット「メインテナンス」でも、歯周病の患者さんが5年間に失う歯は、治療なしで1.8本、治療のみで1.1本、治療後もメインテナンス(定期的な管理)を続けた人で0.5本という研究の数字が紹介されています。
対象や時期が違う研究なので単純には比べられない、という注意書きつきです。
「1本や2本なら」と思うかもしれませんね。
でも奥歯が1本抜けると、まわりの歯が噛む力を肩代わりし、負担が広がっていきます。
年を追うごとに差が開いていくのを、何度も見てきました。
歯を失う原因の上位は歯周病と虫歯
8020推進財団の「第2回 永久歯の抜歯原因調査」(2018年)で、抜いた歯の本数を原因別に見ると、上位は次のとおりです。
- 歯周病(37.1%)
- 虫歯(29.2%)
- 歯が割れる「破折」(17.8%)
破折は、神経を取った歯や大きく削って被せ物をした歯に起きやすく、虫歯治療をくり返した先に待っていることが少なくありません。
歯周病も虫歯も初めは痛みがほとんど出ないので、「痛くなったら行く」では間に合わないことが多いんです。
1年後・5年後・10年後、定期検診に行かないとどうなる?
現場でよく見る経過を、時期ごとに表にまとめました。
| 時期 | 定期検診に通う人 | 痛いときだけ行く人 |
|---|---|---|
| 1年後 | 歯石は数か月ごとに取れている。小さな虫歯は削らずに様子を見られることも | 歯ぐきの下に歯石がたまり始める。初期の虫歯が痛みなく広がる |
| 5年後 | 詰め物のふちのすき間を早めに見つけて対処できる | 詰め物の下で虫歯が再発する。歯ぐきから出血しやすくなる |
| 10年後 | 歯ぐきが落ち着き、自分の歯で噛める | 神経を取る治療や被せ物が増え、歯が割れたり抜歯になったりする |
年数はあくまで目安で、変化の速さはお口の状態やケアによって大きく違います。
1年後の分かれ道:歯石と小さな虫歯
歯ブラシで落としきれなかった歯垢(プラーク)は、やがて硬い歯石になり、歯ブラシでは取れなくなります。
ただ、1年目は通う人も通わない人も、見た目や感覚の違いはほとんどありません。
ここが「行かなくても平気だった」と感じてしまう落とし穴です。
検診で見つかるごく初期の虫歯なら、削らずに、歯みがきやフッ素でケアしながら様子を見られることもあります。
気づかないまま1年たつと、削る治療が必要になっていることも。
歯みがきで血が出る方は「歯磨きで血が出る…それ、重大疾患のサインかも?専門医が教える見分け方」も読んでみてください。
5年後の分かれ道:詰め物の下の虫歯と歯ぐきの変化
詰め物や被せ物のふちには、年月とともにすき間ができやすくなります。
そこから虫歯が再発するのが「二次う蝕(にじうしょく)」です。
外から見えにくく、痛みが出たときには中で広がっていることがよくあります。
歯周病は、歯と歯ぐきの間の溝(歯周ポケット)が深くなる形で進み、歯ぐきが下がる、口臭が気になるといった変化が出てきます。
当院の歯科衛生士は基本的に担当制です。
同じ方を続けて見ていると、以前の記録と比べて「この歯の溝が少し深くなったな」と気づけます。
この比較ができることが、通い続けていただく一番の価値だと思っています。
10年後の分かれ道:治療の繰り返しと抜歯
痛くなってから治療する、をくり返していると、1本の歯は次のような道をたどりやすくなります。
- 小さな虫歯を削って詰める
- 詰め物の下で虫歯が再発する
- 大きく削って被せ物にする
- 虫歯が神経まで届き、神経を取る
- もろくなった歯が割れる
- 抜歯になる
すべての歯がこの順番をたどるわけではありませんし、神経の治療や被せ物は、傷んだ歯を残すために行うものです。
それでも、再発と治療をくり返すうちに歯が少しずつ弱っていくことはあります。
口腔外科にいた頃、抜歯に来られる方から「痛くなかったから、そのままにしていた」という言葉を本当によく聞きました。
失った歯を補う入れ歯・ブリッジ・インプラントにも、費用とその後のお手入れがかかります。
お金や全身の健康への影響は「定期検診で100万円節約!?予防歯科がもたらす経済的メリットと健康効果」にまとめています。
年代で変わる定期検診の差、30代・50代から通う人の10年後
同じ10年でも、何歳から通い始めるかで守れるものが変わります。まずは年代ごとの歯ぐきと歯の本数を見てください。
| 年代 | 4mm以上の歯周ポケットがある人 | 1人平均の歯の本数 |
|---|---|---|
| 50〜54歳 | 44.4% | 27.4本 |
| 60〜64歳 | 59.1% | 25.7本 |
| 80〜84歳 | 61.6% | 19.1本 |
同じ人の変化を追った数字ではなく、調査した時点での年代別の比較です。
表の年代では、年齢が高いほど深い歯周ポケットのある人が多く、歯の本数は少なくなっています。
30代から通う人の40代:歯周病が増え始める時期
4mm以上の歯周ポケットがある人は、40〜44歳で28.6%、50〜54歳では44.4%。
40代から50代にかけて、ぐっと増えます。
30代は仕事や子育てで、自分の歯医者が後回しになりやすい時期ですよね。
国の検討会の中間とりまとめでも、歯科検診の受診率は20〜39歳で低いとされています。
継続して通う427人の10年間の診療記録を調べた長崎大学の研究では、59歳以下の人は、歯みがき指導などの保健指導に協力的な人ほど失った歯が少なく、60歳以上でははっきりした差が見られませんでした。
研究者は考察の中で、若い世代ほど、指導をきっかけに習慣を変えることが歯を守る効果につながりやすい可能性を挙げています。
50代から通う人の60代:歯周病と歯の根元の虫歯
60〜64歳では、4mm以上の歯周ポケットがある人が59.1%になります。
歯周病や年齢とともに歯ぐきが下がると、歯の根元が見えてきます。
根元は歯の表面(エナメル質)より酸に弱く、虫歯になりやすい場所です(根面う蝕)。
この年代で気をつけたい変化は次のとおりです。
- 歯ぐきが下がって、歯が長く見える
- 歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなった
- 冷たいものがしみる
- 口が乾きやすい
先ほどの長崎大学の研究では、歯が24本以上残っている人は歯を失うリスクの指標(オッズ比)が約0.5倍、重度の歯周病がある人は約6倍でした。
50代からでも遅くありません、歯が多く残っているうちに始めるほど、守りやすくなります。
親子で通う家庭の子どもの10年後
私にも5歳の娘がいます。
小さい頃から検診に通う子は、歯医者を「痛いことをされる場所」ではなく「歯をきれいにしてもらう場所」と覚えて育ちます。
中学生になっても自分から検診に来てくれる子が多いのは、そういうご家庭です。
親御さんが一緒に通うと、ご自身の検診も続きやすくなります。
お子さまと一緒に、楽しく通う習慣を作りましょう。
「定期検診は意味ない」は本当?通っていても差がつく理由
「痛くもないのに通う意味ってあるの?」と感じる方は少なくありません。
痛くない時期に行くからこそ意味があります。ただ、通い方によっても差はつきます。
痛くないから大丈夫?自覚なく進む歯周病
令和6年の歯科疾患実態調査では、15歳以上で4mm以上の歯周ポケットがある人は47.8%でした。
歯ぐきから出血がある人も、10歳以上で42.9%います。
歯周病は「静かな病気」と呼ばれます。
初めのうちは自覚症状がほとんどなく、歯ぐきの腫れや出血があっても、痛みがないまま進むことがあります。
痛くないことは、健康の証明にはなりません。
定期検診で歯科衛生士がチェックしていること
「クリーニングと、歯ぐきに何か刺されるだけ」という声を聞くことがあります。
あの「何か刺す」の正体は歯周ポケット検査です。
細い器具で溝の深さを測り、前回より深くなっていないかを確かめています。
ほかにも、次のようなところを見ています。
- 歯周ポケットの深さと、測ったときの出血
- 歯石のつき方と、つきやすい場所
- 磨き残しの場所と、歯みがきの癖
- 詰め物・被せ物のふちのすき間
- 歯ぐきの下がり方
当院では、じっくりケアや指導が必要な方には1回1時間ほど時間をとることもあります。
クリーニングの中身は「歯のクリーニング(PMTC)とは?費用・頻度・歯石取りとの違いを解説」で紹介しています。
通っているのに虫歯ができる理由と、差がつく通い方
正直にお伝えすると、通っていても虫歯や歯周病がゼロになるわけではありません。
ただ、早い段階で見つかれば、治療も小さく済むことが多いんです。
通っている方どうしでも差はつきます。
1つは、検診でお伝えしたセルフケアを家で続けているか。
長崎大学の研究でも、59歳以下では保健指導に協力的な人ほど失った歯が少ない傾向がありました。
もう1つは、口の状態に合った間隔で通っているか。
当院では一律に「〇ヶ月に1回」とは決めず、お口の状態やご希望に合わせて相談しながら決めています。
スウェーデンの研究グループが1つの歯科医院で30年間続けた研究では、歯科衛生士のセルフケア指導と専門的なクリーニングを受け続けた人が30年間に失った歯は、年齢層ごとに1人あたり0.4〜1.8本でした。
最初の6年は比較用のグループもありましたが、30年時点で比べた結果ではありません。
それでも、通い方しだいでここまで守れるという、ひとつの目安になる数字です。
途中でやめた人・何年も歯医者に行っていない人の再開ガイド
途中で通うのをやめていても、戻ってきた時点から立て直せます。
定期検診が途切れる理由と、続いている人の共通点
国の検討会資料で紹介されている、働く人を対象にした調査(堺市西区)では、定期歯科検診を受けない理由は「時間が無い」57.8%が最も多く、「必要性が不明」14.9%、「費用が高い」14.6%と続きます。
長く通い続けている方には、共通点があります。
- 帰る前に、次回の予約を取っていく
- 家族の予約を同じ日にまとめている
- 仕事帰りや休日の予定に組み込んでいる
- 気になることを、その場で担当の衛生士に聞いている
意志の強さより、予定に組み込む工夫が効いているように感じます。
当院は月曜〜土曜は20時まで、日曜も18時まで診療し、休みは年末年始だけ。
JR海老江駅から徒歩1分なので、野田阪神・海老江エリアでお勤めの方は仕事帰りにも寄っていただけます。
久しぶりの歯医者は怒られる?予約から初回までの流れ
久しぶりの歯医者に気が重くなるのは、自然なことですよね。
私たちは、責めるために口の中を見ているわけではありません。
戻ってきてくださったことが、まずうれしいんです。
予約のときは「〇年ぶりです」と伝えていただくだけで十分です。
痛いところや怖さがあれば、それも教えてください。
初回はお口のチェックから始め、必要に応じてレントゲンを撮ります。
歯石が多ければ、何回かに分けて取ることもあります。
怖さや痛みは、遠慮なく伝えてくださいね。
途中から戻った人でも間に合う理由
先ほどの8020推進財団の研究では、男性の場合、非定期的に来院していた人が10年で失った歯は1.2本と、問題が起きたときだけ来た人(2.2本)より少ない結果でした。
いったん中断して再開した人を直接調べた研究ではありませんが、毎回きっちり通えなくても、歯医者とのつながりを切らさないことに意味があると私は考えています。
数年ぶりの方でも、歯石を取って炎症が落ち着くと、出血が減って歯ぐきが引き締まっていきます。
気づいた今日が、いちばん早いスタートです。
よくある質問(FAQ)
Q: 歯医者が怖いのですが、定期検診で痛いことはされますか?
検診のチェックやクリーニングで歯を削ることは、ほとんどありません。
歯ぐきに炎症があると、歯周ポケット検査や歯石取りで少しチクッとしたり、しみたりすることはあります。
不安な方は最初に伝えてください。声をかけながら進めますね。
Q: 何年も放っておいた歯石でも取れますか?
取れます。歯ぐきの下に硬くついた歯石は量が多いこともあり、歯ぐきの状態を見ながら何回かに分けて取ることがあります。
ご自分で器具を使うと歯や歯ぐきを傷つけるおそれがあるので、やめておいてくださいね。
Q: 定期検診1回あたりの時間はどれくらいですか?
お口の状態や処置の内容で変わります。
当院では、歯の本数が多い方やじっくりケア・指導が必要な方には、1回1時間ほど時間をとることもあります。
久しぶりの方は検査が多めになるので、長めにみておいてください。
Q: 大阪市の歯周病検診と、歯医者の定期検診は何が違いますか?
大阪市の歯周病検診は、令和8年度は20歳から70歳までの5歳ごとの年齢(20歳、25歳、30歳…70歳)の方が対象で、無料です。
内容は問診と口の中の診査で、レントゲン撮影や虫歯の治療、歯石除去は含まれません。
勤務先などで同様の検診を受けられる方や、歯周病で通院中の方は対象外です。
対象になる生年月日は、大阪市「歯周病検診を受けましょう」のページで確認できます。
節目のチェックに活用し、歯石取りなどのケアは歯科医院の定期検診で続けるのがおすすめです。
Q: 子ども連れでも定期検診に通えますか?
当院にはキッズスペースがあり、入口はバリアフリーなのでベビーカーでも安心してお越しいただけます。
親子で同じ日に予約すれば、通院も1回で済みます。
お子さまの検診に合わせて親御さんも受けると、どちらも続きやすくなりますよ。
まとめ
10年後の差は、ある日突然つくものではありません。
1年ごとの小さな変化の積み重ねです。
痛くない時期に通うこと、途中でやめても戻ってくること、家でのケアを続けること。それが10年後の口の中を分けていきます。
当院では担当の歯科衛生士が、お口の状態に合わせて通う間隔を一緒に決めています(当院の予防歯科)。
何年ぶりでも大丈夫です。
毎日の小さなケアが、将来の大きな差になります。
分からないことは、いつでもご相談くださいね。
