歯科検診のあとに「シーラントをしておきましょう」と言われて、何のことか分からず戸惑ったことはありませんか。
ネットで調べると「しない方がいい」という声も出てきて、余計に迷ってしまいますよね。
こんにちは。堺市東区・初芝のひきしょう歯科クリニックです。
この記事では、シーラントの仕組みと効果の数字、受ける時期、デメリット、費用、処置の流れを順番にお伝えします。
私たちは「できる限り削らない」治療を大切にしています。
シーラントは、その考え方にいちばん近い予防処置です。
ただし、すべてのお子さんに必要なものではありません。
納得したうえで選んでいただくための材料として、読んでみてください。
お子さんの虫歯予防の全体像は、子どもの虫歯予防で親が知るべき3つの方法にもまとめています。

シーラントとは?奥歯の溝をふさいで虫歯を防ぐ予防処置
削らずに溝を埋めるだけ|詰め物(レジン充填)との違い
シーラントは、奥歯の噛む面にある細かい溝を、歯科用の樹脂やセメントで埋めてしまう予防処置です。
溝に汚れが入り込めなくなるので、虫歯の入口をふさぐことになります。
虫歯の詰め物と似ているようで、中身は違います。
詰め物は虫歯になった部分を削ってから埋めますが、シーラントは基本的に削らず、健康な歯や穴の開いていない初期の虫歯の溝にフタをします。
シーラントだけを行う場合、麻酔は通常いりません。
痛みもほとんどなく、歯を削る音もしません。
子どもの虫歯の8割以上が奥歯の溝から始まる理由
厚生労働省のe-ヘルスネットでは、子どもの虫歯の8割以上が、歯ブラシの届かない奥歯の溝から発生しているという報告が紹介されています(出典:ライフステージ別にみたむし歯の特徴)。
なぜ、それほど溝に集中するのでしょうか。
理由は3つあります。
- 生えたばかりの歯はまだ硬くなりきっておらず、酸に溶けやすい(十分に硬くなるまで、生えてから2〜4年かかります)
- 6歳臼歯は一番奥に生え、しばらく歯ぐきが噛む面をかぶっているので、歯ブラシが当たりにくい
- 奥歯の溝は深くて細く、歯ブラシの毛先が底まで届かない
いちばん弱い時期の歯の、いちばん磨けない場所に汚れがたまるわけです。
そこだけを狙って先に守っておこう、というのがシーラントの発想です。
シーラントとフッ素塗布の違い|物理的なフタと歯質の強化
「フッ素を塗っているから、シーラントはいらないのでは?」とよく聞かれます。
この2つは役割が違うので、並べて見てみましょう。
| シーラント | フッ素塗布 | |
|---|---|---|
| 守る場所 | 奥歯の噛む面の溝だけ | 歯の表面全体 |
| 仕組み | 溝を樹脂で物理的にふさぐ | 歯質を強くして溶けにくくする |
| 効果の続き方 | 取れなければ数年単位 | 年2回以上の継続が前提 |
| 対象の歯 | 主に奥歯 | すべての歯 |
シーラントは「溝にフタをする」、フッ素は「歯そのものを強くする」。
守り方が別なので、どちらか一方を選ぶものではありません。
シーラントの虫歯予防効果|4年以上で約60%という数値の意味
厚生労働省と日本小児歯科学会が示す予防効果
シーラントの予防効果について、厚生労働省のe-ヘルスネットは、過去の研究にもとづく目安として「4年以上で約60%のむし歯予防効果」を紹介しています(出典:シーラント(予防法))。
「受けた子の6割が虫歯にならない」という意味ではなく、すべての歯やお子さんに同じ効果を約束する数字でもありません。
日本小児歯科学会も、2025年3月のガイドラインで、乳歯と生えたばかりの永久歯の両方について、シーラントの実施を提案しています。
このガイドラインでは、海外の研究をまとめた12か月後の虫歯発生の割合が、シーラントなしで11.9%、ありで3.7%と示されています。
ただ、正直にお伝えしておきたいことがあります。
学会の推奨は「弱い推奨」で、もとになった研究の確実性も「低い」と評価されています。
効果はある。
でも、万能ではない。
この2つをセットで受け取ってください。
シーラントで守れる場所・守れない場所
シーラントが守れるのは、フタをした溝の部分だけです。
主に奥歯の噛む面に行いますが、前歯のくぼみが対象になることもあります。
一方、次の場所は守れません。
- 歯と歯の間
- 歯と歯ぐきの境目
- シーラントをしていない歯の面
とくに歯と歯の間は、乳歯でも虫歯になりやすい場所です。
ここは仕上げ磨きだけでなく、フロスでも補ってあげてください。
お子さんのフロスをいつから始めるかは、フロスと歯間ブラシの使い分けの記事で説明しています。
シーラントは何歳から?6歳臼歯を軸にした3つのタイミング
乳歯の奥歯・6歳臼歯・12歳臼歯|生えたてが狙い目の理由
シーラントを検討するタイミングは、大きく3回あります。
| タイミング | 対象の歯 | 年齢の目安 |
|---|---|---|
| 1回目 | 乳歯の奥歯 | 3〜5歳ごろ |
| 2回目 | 6歳臼歯(第一大臼歯) | 6歳前後 |
| 3回目 | 12歳臼歯(第二大臼歯) | 11〜13歳ごろ |
年齢も回数もあくまで目安です。
大事なのは、奥歯が生えてきた頃に相談することで、溝の深さや虫歯リスクに合わせて判断します。
生えたての歯はまだ柔らかく、生えかけの間は歯ぐきがかぶっていて磨けません。
そこを先回りして守るのが、シーラントの狙いです。
なかでも6歳臼歯は要注意です。
乳歯が抜けないまま、その奥からひっそり生えてくるので、保護者の方が気づきにくいのです。
まだ半分しか生えていない段階でも、材料を選べばシーラントができる場合があります。
歯ぐきがかぶって乾かしにくいときは、湿った環境でも使えるタイプの材料を選ぶなど、状態に合わせて判断します。
大人でもシーラントはできるのか
できます。
歯の溝の形や虫歯リスクによっては、大人でも検討できます。
ただし、アメリカの歯科医師会と小児歯科学会の共同ガイドラインでは、大人を対象にした研究データが不足しているとされています。
最近虫歯になった経験がある大人なら同じような効果が期待できる、という見解はあるものの、子どもと比べてどうかは断定できません。
保険については、原則として乳歯や生えたばかりの永久歯の溝の初期虫歯が対象なので、大人の場合は歯の状態を見て確認することになります。
シーラントのデメリット|「しない方がいい」と言われる3つの理由
取れる・欠けることがある|2年で完全に残るのは約6割
シーラントは、一度つけたら一生そのまま、というものではありません。
アメリカの共同ガイドラインには、複数の材料や方法を含む研究の集計で、2年後に完全に残っていたシーラントは55.6%というデータがあります。
もち方は材料や歯の状態で変わりますが、取れやすくなる原因としては次のようなものがあります。
- 歯ぎしりや食いしばりのくせがある
- ガム、グミ、キャラメルなど粘着性の強いものをよく食べる
- 処置のときに唾液が入り込んで、接着が弱くなった
ここでお伝えしたいのは、「取れた=失敗」ではないということです。
取れたからといって、必ず歯が傷ついたわけではありません。
歯の状態を確認したうえで、必要に応じて塗り直します。
ただし、取れたり欠けたりすると、溝を十分に守れなくなります。
気づかないまま過ごさないよう、定期検診で「取れていないか」を見てもらってください。
シーラントの下で虫歯が進む?黒くなったときの見分け方
「シーラントの下で虫歯が進んで、気づいたときには大きくなっていた」
そんな話を聞いて、不安になった方もいると思います。
こうしたことが起こりうるのは、主に次のような場合です。
- 処置のときに溝の清掃や乾燥が不十分で、接着が甘くなり、隙間から汚れが入った
- 取れかけたまま放置して、隙間に汚れがたまった
逆に、きちんと処置されたシーラントの下では、虫歯は進みにくいと考えられています。
アメリカの共同ガイドラインは、まだ穴の開いていない初期の虫歯に対しても、シーラントで封じることを強く推奨しています。
「シーラントをした歯が黒くなってきた」というご相談もあります。
黒く見える原因は、溝の着色の場合も虫歯の場合もあり、見た目だけで区別するのは保護者の方には難しいものです。
自己判断せず、受診してください。
歯科では目で見て確認し、必要ならレントゲンで中の状態を調べます。
穴が開く前の初期虫歯(C0)がどんな状態かは、虫歯のC0〜C4の違いで詳しく説明しています。
シーラントが向かない子・急がなくていい子
はっきりお伝えします。
シーラントは、すべてのお子さんに必要な処置ではありません。
日本小児歯科学会のガイドラインでも、虫歯そのものが減っている今、お子さんごとの虫歯リスクに応じて提案すべきではないか、という意見が出ています。
急がなくていいお子さんの例
- 奥歯の溝が浅く、汚れがたまりにくい
- 仕上げ磨きが行き届いていて、虫歯のリスクが低い
- フッ素を家庭でも歯科でも継続している
慎重に考えたいお子さんの例
- すでに穴の開いた虫歯がある(先に治療が必要です)
- まだ小さくて、口を開けたままじっとしているのが難しい(処置の質が落ちて、かえって取れやすくなります)
- 定期検診に通うのが難しい(取れたことに気づけないので、通院の計画を一緒に考えます)
- 樹脂にアレルギーがある(まれですが)
検診でシーラントを勧められて、「今はやらない」と決めても構いません。
その場合も、虫歯リスクに合わせた予防方法と検診の時期は相談しておきましょう。
迷ったら、「うちの子にはなぜ必要なんですか?」と聞いてください。
納得してから受けていただくことを、私たちはいちばん大切にしています。
シーラントの費用と保険適用の条件
保険が使えるのは溝に初期むし歯(CO)がある子どもの歯
シーラントに保険が使えるかどうかは、「年齢」ではなく「歯の状態」で決まります。
保険の制度上、シーラントは「初期う蝕早期充填処置」という名前になっています。
令和8年歯科診療報酬点数表では、原則として、乳歯または生えたばかりの永久歯の溝に初期の虫歯がある場合に算定するとされています。
ここでいう初期の虫歯とは、歯の表面が白く濁っているけれど、まだ穴は開いていない段階を指します。
学校健診で「CO(シーオー、要観察歯)」と言われることがありますが、その区分だけで保険適用が決まるわけではありません。
歯科で診察し、溝に初期の虫歯があると診断された場合に、保険の対象になります。
ネットでは「6〜12歳なら保険がきく」という説明をよく見かけます。
ただ、制度上、年齢の条件は書かれていません。
保険で受けられるのは、原則として1本につき1回です。
摩耗や欠けで再処置が必要になった場合は、前回から6か月以上あけるなどの条件を満たせば、再び保険で受けられることがあります。
予防目的は自費になる場合も|費用の目安と確認したいこと
溝がまったく健康な歯に、予防だけの目的でシーラントをする場合は、自費になることがあります。
費用の目安は次のとおりです。
- 保険の処置料は1本134点で、この部分だけを3割負担で計算すると400円程度です。別に診察料や材料料がかかることがあり、実際の窓口負担はお子さんの年齢や、お住まいの自治体の医療費助成の内容で変わります
- 自費の場合は医院によって金額が異なります。当院では処置の前に必ずお伝えします
「保険になるのか、自費になるのか」「なぜそうなるのか」は、処置の前に説明します。
保険診療と自費診療の考え方の違いは、歯医者の治療費が高い理由でも説明しています。
シーラントの流れと処置後のケア|痛みも麻酔もいらない理由
処置の6ステップと所要時間
光で固める樹脂系の材料を使う場合、処置は次のように進みます。
材料や歯の状態によって、手順が変わることもあります。
- 歯の溝をきれいに掃除する
- 溝に専用の液をつけて、樹脂がくっつきやすい状態にする
- 水で洗い流して、しっかり乾かす
- 溝に樹脂を流し込む
- 光を当てて固める
- 噛み合わせを確認して終了
処置そのものは、1本あたり数分が目安です。
本数や歯の生え方、お子さんの様子によっては、もう少し時間がかかることもあります。
削らないので、麻酔は通常いりません。
痛みもほとんどありません。
処置中は、唾液が入らないように歯を守りながら進めます。
お子さんが動いてしまうとこれが難しくなるので、様子を見ながら無理のない範囲で行います。
だから当院では、まず歯医者さんに慣れてもらうところから始めます。
「怖くない」と思えてから、気軽に受けてもらえれば十分です。
処置後に続けたいケア|仕上げ磨き・フッ素・定期検診
シーラントをしたあとも、やることは変わりません。
続けてほしいことをまとめます。
- 仕上げ磨きを続ける。シーラントで守れない歯と歯の間は、フロスも使う
- フッ素を併用する。6歳以降は1,500ppm程度のフッ素入り歯磨き粉が推奨されています。歯科でのフッ素塗布は年2回以上の継続が目安です
- 定期検診を受ける。間隔は虫歯リスクやシーラントの状態に合わせて決めます(3〜6か月ごとが目安)。取れていないか、欠けていないか、下が黒くなっていないかを確認します
光で固めるシーラントだけを行った場合は、通常すぐに食事ができます。
ただし、ガムやグミ、キャラメルなど、くっつきやすいお菓子はシーラントを引きはがす原因になるので、しばらく控えてください。
フッ素塗布などを一緒に受けた場合は注意点が変わるので、当日の案内に従ってください。
よくある質問(FAQ)
Q: シーラントをすれば虫歯にならないのですか?
なりません、とは言えません。
予防効果は4年以上で約60%が目安で、守れるのはフタをした溝の部分だけです。
歯と歯の間や歯ぐきの境目は、仕上げ磨きとフロス、フッ素で守ってあげてください。
Q: シーラントは体に悪くないですか?環境ホルモンの話を聞きました
一部の樹脂系シーラント材に含まれるビスフェノールAという成分について、1996年に環境ホルモンのような作用が指摘されたことがあります。
その後の研究で、当時心配されたような危険性は、現在では調べうる限りないとされています(厚生労働省e-ヘルスネット)。
それでも気になる方には、当院で使っている材料をお伝えします。
安心して受けていただくために、遠慮なく聞いてください。
Q: シーラントは何年もちますか?取れたり飲み込んだりしたらどうすればいいですか?
2年後に完全に残っているのは約6割というデータがあります。
数か月で欠けることもあれば、数年もつこともあります。
取れたからといって必ず歯が傷ついたわけではなく、状態を確認したうえで塗り直せます。
取れると溝を守れなくなるので、気づいたら早めに受診してください。
取れたものを飲み込んだかもしれないときも、歯科にご相談ください。
咳が続く、息苦しいなどの症状があれば、すぐに医療機関を受診してください。
Q: 歯科検診でシーラントを勧められました。断ってもいいですか?
もちろん構いません。
シーラントは全員に必須の処置ではなく、溝の深さや仕上げ磨きの状況、虫歯のリスクによって「今は急がなくていい」お子さんもいます。
当院では、なぜ勧めるのかを説明し、納得していただいてから行います。
迷ったら、理由を聞いてください。
Q: 6歳臼歯がまだ少ししか生えていなくてもシーラントはできますか?
できる場合があります。
歯ぐきがかぶっていて乾かしにくい時期は、湿った環境でも使えるグラスアイオノマー系という材料を選ぶなど、工夫して行います。
乾燥を十分に保てる状態なら、長くもたせるために樹脂系を選ぶこともあります。
生えそろうまで待つかどうかは、虫歯リスクも含めて一緒に相談しましょう。
まとめ
シーラントは、虫歯になる前に、削らずに奥歯の溝を守る予防処置です。
4年以上で約60%の予防効果があり、フッ素や仕上げ磨きと組み合わせることで、お子さんの奥歯をしっかり守れます。
ただし、取れることもあれば、処置が不十分だと下で虫歯が進むこともあります。
すべてのお子さんに必要な処置でもありません。
だからこそ、「なぜうちの子に必要なのか」を理解してから決めてほしいと思っています。
6歳臼歯が生えてきたかな、と思ったら、一度チェックにお越しください。
迷っている方のご相談も歓迎です。
堺市東区・初芝のひきしょう歯科クリニックは、お子さんが安心して通える歯医者さんでありたいと考えています。
小児歯科のご案内もあわせてご覧ください。
