MENU

受け口の治し方|子供と大人で異なる治療法とタイミングを解説

「うちの子、下の歯が前に出ている気がする」「昔から噛み合わせが逆のまま」。

受け口のご相談は、保護者の方からも大人の方ご本人からも、よくお受けします。

こんにちは、堺市東区・初芝のひきしょう歯科クリニックです。
受け口は、原因のタイプと年齢で治し方が大きく変わります。

この記事では、子供と大人それぞれの治療法とタイミングを、歯科の学会資料をもとに解説します。
専門用語には説明を添えますので、歯医者さんが苦手な方も安心して読み進めてくださいね。

この記事の要点まとめ

受け口治療 子供と大人の違い
子供は顎の成長を利用でき、大人も治療できます。年齢だけで決めず、歯の傾きと骨格の状態から自分に合う方法を選びます。
目次

受け口(反対咬合)とは?3つのタイプで治し方が変わります

受け口・しゃくれ・反対咬合・下顎前突は何が違うのか

受け口とは、下の前歯が上の前歯より前に出ている噛み合わせのことです。
歯科では「反対咬合(はんたいこうごう)」や「下顎前突(かがくぜんとつ)」と呼びます。

よく混同される「しゃくれ」は顎の輪郭の話で、噛み合わせの話である受け口とは別物です。
上下の前歯の先端どうしが接触する状態を「切端咬合(せったんこうごう)」といい、受け口との区別が必要です。

日本小児歯科学会の判定基準では、前歯が連続して3本以上逆に噛んでいる状態を反対咬合としています。

歯性・骨格性・機能性の3タイプ|どれに当てはまるかで治療法が決まります

受け口は、原因によって大きく3つのタイプに分かれます。

タイプ主な原因治療の方向性
歯性歯の傾きや生える位置矯正治療だけで対応できる可能性が高い
骨格性顎の骨の大きさやバランス程度によっては外科的な治療も選択肢に
機能性歯の早期接触などにより、下顎が前方へ誘導される原因となる接触を確認し、必要に応じて矯正装置などで改善を図る

日本矯正歯科学会のガイドラインでは、実際には複数のタイプが複合しているケースが多いとされています。
また、下顎が出ているというより、上顎の成長が足りずに相対的に受け口に見えるケースも少なくありません。

見た目だけで判断せず、検査でタイプを確認することが治療の出発点です。

受け口になる原因|遺伝と、後天的なくせの両方が関わります

日本矯正歯科学会の診療ガイドラインには、骨格性の受け口では遺伝的な要因が大きく関わり、ご家族の中で続けて見られやすいと記載されています。
後天的な環境要因として、気道の状態や口腔習癖などが関与する場合もあります。

ただし、受け口との関係は一様ではなく、個別の診断が必要です。
ご家族に受け口の方がいると「自分のせいでは」と心を痛める保護者の方がいらっしゃいますが、遺伝的な要因があっても必ず受け口になるわけではありません。

どうかご自身を責めないでください。

子供の受け口は何歳から治す?「様子を見ましょう」と言われたときの判断材料

開始時期の目安と、上顎の成長というタイムリミット

「何歳から治療すべきか」は、サイトによって書いてあることがバラバラです。
3歳、5歳、7歳まで。読み比べるほど混乱しますよね。

答えが割れる理由はシンプルで、受け口のタイプによって適した時期が違うからです。

日本臨床矯正歯科医会によると、治療開始年齢で最も多いのは7〜8歳ですが、受け口は早めの治療がよい場合もあり、ケース・バイ・ケースとされています。
目安になるのが顎の成長の時間差で、日本矯正歯科学会のガイドラインによれば、上顎の成長は10〜12歳でほぼ終わる一方、下顎は16〜18歳ごろまで伸び続けます。

上顎の成長を利用した治療には、時期の限りがあるわけです。

待っていいケースと、早めに相談したほうがいいケース

ご家庭で確認できる、相談の目安をまとめました。

  • 下顎を前にずらさないと噛めない、噛むときに顎が横にずれて見える
  • 前歯の先どうしを合わせる位置に持っていけない
  • ご家族に受け口の方がいる
  • 鼻づまりや口呼吸があり、口がいつも開いている
  • 下顎の左右のずれが見た目でわかる

当てはまっても必ず治療が必要というわけではありませんが、一度診せていただく目安になります。
日本小児歯科学会は、永久歯への生え変わりで自然に治ることもある一方、遺伝的要因があると自然には治りにくいと説明しています。

「そのうち治る」と待ち続けるより、タイプを確認したうえで待つほうが安心です。

3歳児健診や学校の歯科健診で指摘されたら

令和6年度の政府統計では、3歳児健診の受診者801,923人のうち、咬合異常が認められた子は137,446人で、割合は17.1%でした。決して珍しくありません。

3歳児はまだ乳歯列で、顎も成長途中です。そのため、状態によっては経過を観察します。

健診で指摘されても、すぐに装置をつけるわけではありません。
まず検査でタイプを確認するところからが、最初の一歩です。

子供の受け口の治し方|装置の種類と、早期治療でできること・できないこと

成長期に使われる主な装置

成長期の受け口治療では、主に次のような装置が使われます。

  • 成長が足りない上顎を前方に引き出す「上顎前方牽引装置」
  • 下顎の前方成長を抑える目的で用いられてきた「チンキャップ」。ただし、骨格への効果を裏付けるエビデンスは十分ではありません
  • 舌や口まわりの筋肉のはたらきに作用する、取り外し式の「機能的矯正装置」
  • 上顎の幅を広げる「拡大装置」

どの装置も、毎日決められた時間つけてはじめて効果が期待できます。
お子さんの協力が欠かせませんから、嫌がるときは無理をさせず、気持ちを見ながら進め方を一緒に考えていきましょう。

学会のガイドラインが示す、早期治療の効果と限界

「早く始めれば必ず治るのでは」と期待したくなりますが、ここは正直にお伝えします。

日本矯正歯科学会の矯正歯科治療の診療ガイドライン 成長期の骨格性下顎前突編(2020年)では、上顎前方牽引装置と機能的矯正装置は「弱く推奨」、チンキャップは骨格への効果に十分な確信が持てないと評価されています。

上顎前方牽引装置は、将来、外科的矯正治療が必要と判断される患者を減らす可能性が示されています。
ただし、2024年のコクランレビューでは、この長期効果に対するエビデンスの確実性は低いと評価されており、手術を避けられない場合もあります。

また、下顎は思春期まで成長が続くため、いったん改善しても成長とともに再発することがあります。
不安にさせたいわけではなく、できることと保証できないことの両方を知ったうえで、納得して選んでいただきたいのです。

1期治療と2期治療|永久歯が生えそろったあとの治療が必要になることもあります

子供の矯正は、乳歯と永久歯が混在する時期に顎の土台を整える「1期治療」と、永久歯が生えそろってから歯並びを整える「2期治療」に分かれます。

1期治療で改善しても、成長の経過によっては2期治療が必要になり、費用と期間が追加でかかる場合があります。

日本歯科医師会も、骨の成長を見極める必要がある場合は治療の時期を分けることがあると説明しています。
こうした見通しも、最初に必ずお伝えしています。

大人の受け口の治し方|矯正だけで治せる場合と、手術が必要になる場合

大人でも治療は可能です|矯正だけで対応できるケース

「今さら治らないのでは」とあきらめている方へ。
矯正治療に年齢の上限はありません。
歯と歯ぐきの状態が整っていれば、大人になってからでも治療を検討できます。

歯の傾きが主な原因の歯性タイプなら、ワイヤー矯正などで改善が期待できます。
マウスピース型の装置もありますが、受け口の程度によっては対応が難しい場合があります。

期間の目安は、日本歯科医師会によると成人で1〜3年程度、通院は月1回程度
当院は、できる限り歯を削らない・抜かない治療を大切にしています。
抜歯が選択肢になる場合も、理由をご納得いただけるまでご説明します。

外科的な治療(顎変形症の手術)が検討されるケース

骨格のずれが大きい場合について、日本口腔外科学会は、歯の矯正だけでは十分な結果が得られず、顎の骨を動かす手術(顎矯正手術)が必要になることがあると説明しています。

顎変形症の治療は、一般的には手術前の矯正、顎矯正手術、手術後の矯正という流れで進みます。
症例や医療機関によって、治療手順が異なる場合もあります。

日本臨床矯正歯科医会によると、手術には10〜14日ほどの入院が必要です。
「顔の手術なんて怖い」と感じるのは当然です。
ただ、手術が必要かどうかは検査をしてはじめてわかりますし、いきなり手術を勧められることもありません。

まずは当院のような一般歯科でご相談ください。
必要に応じて口腔外科や矯正の専門医療機関と連携し、一歩ずつ安全に進めていきます。

割り箸や指で押す方法、ベロ回しで治せますか

ネットで見かける「割り箸を噛む」「指で前歯を押す」といった方法は、おすすめできません。
歯や歯を支える組織、顎の関節に負担がかかるおそれがあるうえ、骨格が関わる受け口を自力で動かすのは難しいためです。

舌や口まわりの筋肉のトレーニング(口腔筋機能療法)は、自己流ではなく歯科医院の管理のもとで治療と併用するものと考えてください。
なお、受け口を放置した場合については、噛む効率の低下や発音への影響、顎関節症との関連、見た目に関する自尊心の低下などが日本矯正歯科学会のガイドラインで報告されています。

受け口の治療にかかる費用と期間|保険が使える条件も解説します

費用の目安と、装置代以外にかかるもの

日本矯正歯科学会は、矯正治療の費用を一般的な総額で80〜120万円程度とし、地域や医院によって差があるとしています。
日本臨床矯正歯科医会の目安も80万〜120万円で、初診料はおおよそ数千円です。

治療期間は、装置を入れている期間で2〜3年程度、簡単な治療なら半年程度が目安。
見落としやすいのが、装置代以外の費用です。

  • 初診相談料や精密検査・診断料
  • 通院ごとの調整料
  • 治療後の保定装置(後戻りを防ぐ装置)の費用
  • 保定期間中の観察料

支払い方法にも、最初に総額を決める方式と処置ごとに支払う方式があります。
比較のときに混乱しやすいので、遠慮なくご確認ください。

保険が使える3つのケースと、医療機関の条件

矯正治療は原則自費ですが、次の3つの場合は保険が適用されます。

  • 厚生労働大臣が定める疾患(66疾患)に起因した咬合異常
  • 前歯・小臼歯の永久歯のうち3本以上が生えてこないことに起因した咬合異常(歯ぐきを開く手術が必要な場合)
  • 顎変形症(顎の骨の手術が必要な場合)の手術前後の矯正治療

ただし、どの歯科医院でも使えるわけではなく、国が定める施設基準を満たして届出をした医療機関に限られます。
大阪府内の届出医療機関は近畿厚生局のサイトで公開されていますので、外科矯正をお考えの方は確認しておくと安心です。

保険が使えない場合の医療費控除

保険が使えない場合でも、一定額を超える医療費について医療費控除を受けられ、所得税や住民税が軽減される場合があります。

噛み合わせの機能改善を目的とした矯正や、お子さんの成長を妨げないための矯正は対象と扱われることが多く、見た目の改善だけが目的だと対象外となることがあります。

適用の可否は税務署にご確認のうえ、領収書は必ず保管しておいてくださいね。

よくある質問(FAQ)

Q: 子供の受け口は自然に治ることもありますか?

自然に改善することもありますが、確実ではありません。
日本小児歯科学会は、永久歯への生え変わりで自然に治ることもある一方、遺伝的要因があると自然には治りにくいとしています。
ご家族に受け口の方がいる場合や、顎をずらさないと噛めない様子があれば、一度ご相談ください。

Q: 子供の受け口の治療は、何歳から始めるのがいいですか?

一律に決まった年齢はなく、受け口のタイプによって適した時期が変わります。
日本臨床矯正歯科医会によると治療開始で最も多いのは7〜8歳ですが、噛み合わせの状態によっては乳歯の時期から始めることもあります。
まずは検査でタイプを確認するのがおすすめです。

Q: 大人になってからでも受け口は治せますか?

年齢の上限はありません。
歯と歯ぐきの状態が整っていれば、大人になってからでも治療を検討できます。
歯の移動で対応できるか、外科的な治療も選択肢に入るかは、検査で確認して判断していきます。

Q: 受け口の治療では、必ず歯を抜いたり手術をしたりするのでしょうか?

すべての方に必要なわけではありません。
歯の傾きが主な原因なら、矯正だけで対応できる場合があります。
当院はできる限り削らない・抜かない方針を大切にしており、抜歯や手術が選択肢になる場合も、ご納得いただけるまでご説明します。

Q: 受け口が気になったら、まずどこに相談すればいいですか?

まずはかかりつけの歯科医院にご相談ください。
検査でタイプを確認し、必要に応じて矯正歯科や口腔外科と連携します。
初回の相談ですぐに治療が始まるわけではありませんので、「聞くだけ」のつもりで気軽にお越しください。

まとめ

受け口の治し方は、歯性・骨格性・機能性というタイプと年齢によって変わります。
子供は顎の成長を利用できる時期がある一方、成長には個人差があり、早く始めれば必ず解決するとは限りません。

大人にも年齢の上限はなく、全員に手術が必要なわけでもありません。

出発点は、検査でタイプを知ること。
ひきしょう歯科クリニックは、「なぜこの治療が必要なのか」をご納得いただけるまでご説明することを大切にしています。

治療を決めてからではなく、迷っている段階でこそ、気軽にご相談くださいね。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

目次